公益社団法人岩手県猟友会

よもやま話

イノシシは凶暴な動物

西磐猟友会 佐藤 律衛

 一関地方でイノシシが初めて捕獲されて約10年位になるでしょうか。西磐猟友会発足時の会長が、猟銃で捕獲したのが新聞紙上で紹介されたのが始まりでした。

 その後田畑の掘り起こし被害が市の担当部課に多く報告されるようになり、当猟友会で有害捕獲隊を編成し、各グループごとに早朝、夕方とパトロールを実施しましたが、その当時、生息数もそれほど多くなく著しく成果が上がるまでには成りませんでした。

 罠の狩猟免許所持者もそれほど多くなく、一関市鳥獣被害対策協議会が発足し、箱罠・くくり罠を猟友会に提供して、猟友会が設置、管理を実施しているのが現状です。

 罠狩猟免許所有者も、ここ4年ぐらい前から大幅に増加しています。又捕獲数もここ数年で大幅に増えています。又被害者である農家の方々も電気柵や囲い網などで侵入対策をしているが大変な作業です。最近特に被害の多いのは、自家用に栽培しているジャガイモ、サツマイモなどのイモ類です。収穫時期になってそろそろ収穫するかと予定しているときに一晩で全滅です。農家の作物を守ることと、イノシシの個体数を減らすことが目的ですが大変なことです。最近捕獲頭数もだいぶ増えているのですがそれにも増してイノシシの個体数も多く確認されます。狩猟免許所有者もだいぶ高齢化が進んでいます。最近若い猟師も徐々に増えつつありますが会社勤め等で日常の罠の見回りは大変だと思います。

 さて、最近使用している罠の種類ですが、箱罠、くくり罠この二種類が主です。箱罠は、内部回転式、両扉型と片扉型があります。しかけについてはワイヤ式と踏板式です。箱罠は設置時の運搬等で人手が必要になり、設置場所によっては地主の許可が必要になり、設置後の管理にも餌の見回り等で時間がかかりますが、いいところはくくり罠と違って一度に数頭のイノシシが捕獲できることです。自分も2頭、3頭と一度に捕獲したことが度々あります。それと箱罠のいいところは、止めさしが比較的楽にできます。それと同時に獲物の損傷を最小限度にできます。自分は止めさしには主として空気銃(5.5ミリ)をよく使用しています。

 次に、罠猟をしていて大変なのは、本命以外の動物が罠に掛かった時です。特に熊が罠に掛かると罠本体から仕掛け等すべて壊されます。

 続いてくくり罠ですが、当初は設置場所、仕掛け方法でだいぶ苦労しましたが、最近ではだいぶ慣れてきましたがまだまだ失敗の多い毎日です。くくり罠で捕獲数を多くするには罠の設置数を多くするのがいいようです。猟友のベテランの方などは数多く設置して一日中見回りに時間がかかるようです。それに比較して捕獲頭数も月に数十頭も捕獲しています。猟具についても自分で工夫をし改良し製作もして頑張ってます。

 続いて、自分の捕獲実績の中で忘れられない例を2、3紹介します。まず箱罠ですが同じ地区内の会員と一緒に水田の掘り起こし被害現場に6名で箱罠を設置、その後約2週間ぐらいしてからでしょうか、朝罠に獲物が入っているとの連絡がきた。まだ会社勤めでしたので早朝確認をしに出向き見たとたんビックリ、なんと箱

 罠いっぱいになるぐらいの大物が檻の鉄筋を曲げて設置した場所より1mも移動するほど暴れているのでした。自分は仕事もあるのでその後の処理は猟友にお願いをして帰ったのが最初でした。又ある時は箱罠ですが親と子のイノシシが箱罠の中に入っていました。親の体長が130㎝ぐらい子供は瓜模様の縦縞が取れたばかり親子です。いまだに後悔しているのですが、最初に子供を止めたので残った親が倒れた子供を必死で起こそうとしている姿を見ると、止める順番を間違えたかなと今でも後悔している、いかに農家の人たちから嫌われている害獣でも親と子の関係は、我々人間と変わりがないと感じさせられる一場面だった。

 次は、くくり罠で最初に捕獲したときのことです。田植えも終わったころ罠を仕掛けていた農家の方から連絡が入り、裏の笹薮から音がするのでイノシシが罠に掛かっているようだよとの連絡。現場近くの農道で連絡をくれた農家の方に待ってもらい自分一人で罠を掛けていた現場に向かう。笹竹が踏み荒らされているが獲物のいる気配がしない、笹薮の中へ踏み込んだとたんに黒い物体が自分の1m手前で急反転、慌ててしまって銃を構えることもできなかった。幸いなことに使用していたワイヤーの長さの範囲内だったので何事もなく捕獲できたのは、今になっても忘れることができない思い出です。イノシシは深い穴を掘り隠れていたようでした。

 又、ある時は獣道に仕掛けたくくり罠ですが、農道から獲物の掛かっているのが確認でき笹竹や立ち木にワイヤーが絡んで身動きの取れない状態なので今日の止めは楽勝だなと近づくと動けないはずのイノシシが「ブイ、ブイ」鳴きながら自分に向かって近づいてくるのでした。慌てて銃を発射、運よく頭部に命中、事なきを得た。後で確認したところワイヤーが切断して笹竹に絡んでいただけだった。危ない、危ない。

 続いては、つい最近のことだが、水田の掘り起こし被害が出ている場所でくくり罠を掛けることになり近くに設置する場所がなく少し離れた沢の中に獣道を探し3個設置した。約1ヵ月間見回りをしたが獲物の来ているような気配がない。ぼちぼち罠を外して別の場所に移動しようと設置してある沢をのぞいたら罠に大物が掛かり大暴れしている。よく観察してみると暴れ方が今までとは違っていた。自分に向かって突進してきては頭を上にして反転を繰り返します。良く観察したら前足に掛かるべきワイヤーが鼻に掛かっていた。今までも下あご、上あごに掛かったのはあったが鼻だけ掛かったのは今回が初めてでした。よくぞ外れずにいたものだと感心しています。もし外れて水田の見回りに来た農家の方に被害でもあったら一大事でした。罠を設置したら毎日の見回りが大切だなとつくづく感じされられた一件でした。

 野生動物を罠で捕獲する事は本当に大変なことです。特にくくり罠の場合狙った獲物だけ掛かればいいのですが、キツネ、タヌキ、穴熊、などはいいほうで厄介なのは熊です。熊が掛かれば罠は全部使い物になりません。まして厄介なのはすぐに処分が出来ないことです。近くに人がいるときにワイヤーが切れでもしたらそれこそ一大事です。それでも勝手に処分するわけにもいかず各関係機関に報告をして指示を待ちます。処分が決定しても解体、焼却などの作業があります。又最近多いのはカモシカです。皆さんご承知のようにニホンカモシカは国の特別天然記念物です。簡単には処分が許可されるはずがありません。間違って掛かった場合は放獣するのに重労働です。

 いずれにせよ、最近の傾向として罠の狩猟免許を取得する人が多くなっています。罠で捕獲する獲物は凶暴な野生動物です。くれぐれも取り扱う際には細心の注意をすること、特にくくり罠を使用する場合はワイヤーの点検をよくすること、その他より戻しストッパーなどの点検も重要なことです。

 イノシシは最近巨大なものも捕獲されている。岩手県内各猟友会でも最近はだいぶイノシシの捕獲数が多くなってきているようですがお互いに、ケガなどないように無理をしないで頑張ってやりましょう。