公益社団法人岩手県猟友会

よもやま話

狩猟1年生のひとりごと

山田猟友会会員 山形勇彦

 私は、平成18年春、仕事の関係で北海道から岩手県へ転勤してきました。以前から狩猟については興味がありましたが仕事上、転勤が多く「犬」の管理ができないということで狩猟免許を取得することなく半ば諦めていました。

 ある時、「山田猟友会」の存在を知り、会長はじめ皆さんの楽しい思い出話を聞いているうちに狩猟の世界へ入ることに決しました。昨年講習会に参加し念願の狩猟免許を取得し「狩猟1年生」に40代半ばでなりました。

 初猟の前日には、子供の頃の遠足前夜のように興奮してなかなか眠れませんでした。この体験を皆さんにも聞いてみたら同じような経験をしていることを確認しました。考えてみればそれだけ満足度の高い趣味であることを改めて認識しました。

 11月半ばから2月末にかけて日曜日の度に、約2時間かけて猟場へ移動します。その車中でベテランの方の成功談や失敗談を聞き今日のシカ猟へ期待感がふくらんでいくことを自分の中で感じました。現場へ近づくにつれて山の周りの足跡調査を行い本日のシカ猟開始となります。猟に先立ち綿密に計画及び注意事項が各員に伝えられます。その際、自分は初心者ということもあり先輩とともに持ち場に付かせていただきました。はじめのうち持ち場について、サァ来いとばかり気合いをいれていましたがシカが近くにまで来ても気配を覚えられ、結果、突然シカが現れ、疾風のように去っていき撃てるタイミングを失することが何度かありました。反省会などで気配を感じる能力を身につけなさいと指導されましたが、よく理解することができませんでした。大切さを実感するまでは、多くの月日を要しました。

 焦りと期待感が交差する中で、チャンスは猟期最後の日に音もなく訪れました。家を出発し「今日も1発も撃てないのかな」 と思いつつ猟場へ向かいました。最後の日ということもあり持ち場の周囲の確認を自分なりに綿密に行い、シカの進入してくると思われる方向に銃を構え、身動 きせず獲物の出現を待ちました。静けさのなかで、何かが近づいてきている「気配」を感じ、ゆっくりと後ろを確認してみると、シカが数頭山の峰にいて、こちらの方向を確認している様子が伺えました。動かないで様子を見守っていると、約10頭ほどの群れであることが確認できました。その群れが驚いたことにこち らへゆっくりと確実にこちらへ向かってくるではないですか。気持ちは最高潮に興奮していることが自分でもわかりました。ゆっくりと2発の弾を上下へ装填 し、前から指導されたことを思いだし周囲に残りの弾を並べ落ち着いてもう一度周囲を確認し、安全な方向にシカが進入してくることを待ちました。気配に気づかれないよう意識してゆっくりとした動作に心がけ銃を構えました。群れの先頭のシカの前足の付け根付近に狙いをつけました。まだシカはこちらの存在に気づ いていない様子で近づいてきました。そのとき1発を発射、続いて2発目をその後ろのシカに続けて発射しました。シカは一瞬転んだような感じで倒れました が、すかさず立ち上がりその場を立ち去りました。「外れた」と思い間髪を入れず更に弾を2発詰めて、逃げ去る方向に更に発射しました。その後シカが周囲からいなくなり、付近へ報告したのち、戦果の確認を行いました。血の跡をたどっていくと1頭が木の陰に倒れていました「やった」興奮は最高潮になりました。 確認すると心臓のところにヒットしていました。気を取り直しさらに別の血の跡があったのでたどっていくと、もう1頭が約100メートル先に倒れていまし た。2頭をゲット、結果、参加会員の全員から祝福を受けました。回収し解体している間は時間の経過を意識することは全くありませんでした。また、その夜の反省会は大いに盛り上がったことを今でも鮮明に覚えています。

 最後に猟友会の皆さんの指導を忠実に守った結果、「シカ猟1年生」でも、最後の日に獲物をゲットすることができたことに対して、猟友会各位へ改めて感謝するとともに、今後も狩猟者としての社会的責務及び関係法令の遵守を肝に銘じ末永く狩猟を行っていきたいと考えています。今後も岩手県猟友会会員各位の御支援、御協力を切にお願いするとともに、会の発展のために微力ながら貢献したいと考えています。